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【日本H89】 中国デフレ時代「勝ち組」飲食ビジネスに学ぶ生存戦略2026.03.02
1. 今、中国の飲食業界で何が起きているのか
①以下のように信じて突き進んだ中
国の企業が、次々と息切れしている。
「とにかく安くすれば売れる」
②中国の外食市場を眺めると、まるでビジネ
ススクールの教科書を読んでいるかのような、
リアルな教訓がそこかしこに転がっている。
景気後退の波を受けた中国消費者の財布
のひもは、想像以上に固く結ばれている。
↓
そんな逆風の中で、ある企業は、快進撃を続け、
ある企業は迷走する差はどこから生まれるのか。
③今回は、中国飲食業界の最前線から、日本の
ビジネスパーソンにとっても、 他人事ではない
デフレ時代の生き残り戦略についてお話する。
2. 多角化の罠(「紅石榴計画」が教えてくれること)
①中国飲食業界の雄といえば、
なんといっても火鍋チェーン。
業界大手の 海底撈(ハイディラオ)は、本業で
ある火鍋事業の強化に加えて、 様々な新規事業
へと触手を伸ばしてきた。
②2024年8月、 海底撈は、正式に
「紅石榴(赤石榴)計画」を発表。
社内起業制度によって、 飲食の新ブラン
ドを次々と孵化させる戦略を打ち出した。
↓
その動きは多岐にわたる。
・焼肉店「焰請烤肉铺子」
・格安火鍋業態「小嗨火鍋」
・ファストフード業態「火焰官」など
③2024年末時点で11ブランド・74店舗を展開してい
る (参照:中国財経メディア・証券時報、 2025年3月)。
一方、これらの取り組みは、 他社との明確な差別化
軸を確立できているとはいえず、2024年の「その他
レストラン収入」は、計4.83億元にとどまっている。
④海底撈本体の年間売上高が 427億元を超える
規模に比べると、新規事業の貢献度は、限定的。
多角化が悪いわけではない。
↓
問題はなぜ多角化するのかというコアな問い
に答えられないまま「なんとなく手を広げた」
パターンに陥ってしまうこと。
⑤消費者の節約志向が高まる中で、場当た
り的な多角化は経営資源の分散を招くだけ。
この苦い経験は日本の中小企業経営者にとって
も、思い当たるふしがある話ではないだろうか。
3. 現代中国消費者は「原価率」まで調べる時代
①驚くべきは今の中国消費者の情報リテラシーの高さ。
SNS上では、以下情報が話題を集めている。
「有名飲食チェーンの原価率比較」
②たとえばこんな具合。
・中国系ファミレス「西貝(シーベイ)」:
原価率 約25%
・イタリアンファミレス「サイゼリヤ
(中国名:薩莉亜)」:原価率 約35%
・回転寿司「スシロー(中国名:寿司郎)」:
原価率 40%以上
③これらの数字はSNSユーザーや食品業界の
専門家が試算・シェアした推定値であり、各
社の公式発表ではない。
しかし、その数字が一般消費者の間で「コスパの
目安」として広く共有されている事実こそが重要。
↓
日本のバブル崩壊後の消費者心理と比べても、
その目の厳しさは一段上を行くかもしれない。
④「安いから許せる」ではなく「払った金額に
見合う価値があるかどうか」を冷静に判断する
消費者が、確実に増えている。
現地を知る人間が口を揃えていう言葉がある。
「価格とその内容への審美眼がかつての日本の
不景気時代より格段にシャープになっている」
⑤スマホで原価まで調べてから来店する客を相手に、
「雰囲気で売る」「ブランドで売る」 という 旧来の
戦略が機能しなくなってきている。
4. 不景気の中の「勝ち組」に共通する2つの戦略
①逆境の中にも例外はある。
むしろ、不景気をエンジンに変えるかの
ような成長を遂げている企業が存在する。
②その代表格が、以下。
・蜜雪冰城(ミーシュー)
・瑞幸珈琲(Luckinコーヒー)
5.【勝ち組❶】蜜雪冰城
(6元でも儲かる「仕組み」を作った会社)
ティードリンク販売の蜜雪冰城の主力
商品の客単価は、以下の破格の価格帯。
・タピオカミルクティーが6元
・ソフトクリームが3元
③「そんな値段で利益が出るはずが
ない」と思うのが普通の反応だろう。
しかし、この企業の本質は価格の
安さではなく「構造の強さにある」。
↓
原料の調達から製造、 物流、直営店・加盟店
への供給まで、 サプライチェーン全体を自社
でコントロールする「垂直統合モデル」を徹
底的に作り込んでいる。
④食材の自社生産率は、約60%に達し、使用
するカップやストローさえも、自社でプラス
チック粒子から製造するほどの徹底ぶり。
川上(原材料)から川下(販売)までを自社で
握ることで、6元という価格でも 十分な利益を
生み出せる体質を構築している。
⑤結果、蜜雪冰城の2024年の売上高は、前年比
22.3%増の 248億元 (約5,000億円)、 純利益は
39.8%増の約44億元を記録。
2025年3月には香港証券取引所に上場し、初日から
30%超の株価上昇を記録、時価総額は 1,100億香港
ドルを超えた。
⑥節約志向が強まる時代において、むしろ
追い風を受けるかのように伸び続けている。
(参照:日本経済新聞、2025年3月3日)
世界の店舗数は スターバックス
をも凌駕し、現在4万5,000店超。
↓
中国国内だけで見ると、三線以下の地方都市の店
舗が 57%以上を占めており、「低価格×地方展開」
という戦略が明確に機能している証拠でもある。
6.【勝ち組❷】蜜瑞幸珈琲
(地方×デリバリーという二段ロケット)
①瑞幸珈琲もまた、異例の成長を 続ける企業。
2025年の年間売上高は前年比43%増の492億元
(約7,000億円)に達し、 店舗数は 31,000超に
まで拡大した。
②単価の安さは、蜜雪冰城と同様
だが、成長の方程式が少し異なる。
都市部の既存店売上が厳しい局面でも、
以下の取り込みを同時進行させている。
・新規出店による売上拡大と
・地方都市でのコーヒー需要
③さらに「デリバリーネットワーク」への
積極投資が競合との差別化軸になっている。
スマホ一つで注文でき、自宅やオフィスに届く手軽さ。
↓
そこに、「ちょっと贅沢な一杯」
という心理的な満足感が重なる。
デフレ下でも「日々のご褒美」として機能できる
価格帯と、ブランドポジションを確立したことが、
成長の核心にある。
④ 2025年の 月間 アクティブユーザー数は、
一時期1億人を超えて、累計取引顧客数は
4億5,000万人を突破した。
以下により「賃料・人件費コスト」を抑えな
がら、低価格を維持するという構造が、瑞幸
珈琲の競争優位である。
・アプリベースの注文システム
・小型スタンド形式の店舗設計
7.「安売り」と「利益の出る体質」は別物
①ここで重要なのは、この2社が、単純な
「低価格競争をしているわけではない」点。
価格だけを下げれば、当然ながら利益は消える。
↓
それは体力勝負の消耗戦であり、
最終的には誰も得をしない。
②蜜雪冰城も瑞幸珈琲も、低価格と高頻度の組
み合わせを武器にしながら、コストの源泉であ
る上流(原材料・製造)を自社でコントロール
することで、価格戦争に巻き込まれない仕組み
を作り上げている。
つまり「安く売りながらも利益が出る体質を先に設計したこと」
③蜜雪冰城のビジネスモデルは、むしろ「製造卸」に近い。
フランチャイズ加盟店に「原材料・資材」を
販売することで、 利益を上げる 構造であり、
ロイヤルティ収入はわずか 2.4%にすぎない。
④94%以上が原材料・設備の物販から生まれている。
このため、加盟店が増えれば増えるほ
ど、本部の利益も増える仕組みである。
⑤安売りは結果であって、目的ではない。
その本質を理解しているかどうかが、デフレ
時代の勝ち負けを分ける分水嶺になっている。
8. 日本のビジネスへの示唆(格安×仕組みという方程式)
①この話は日本のECや実店舗ビジネスを営む
方にとって 決して、遠い国の出来事ではない。
「消費者がコスパを重視し、SNSで価格と品
質を比較検討する」という行動パターンは、
日本でもすでに定着しつつある。
↓
Z世代を中心に、食べログ・Google口コミの
評価だけでなく、以下を考えながら購買する
層は確実に増えている。
「原材料費はどれくらいか」
「なぜこの価格なのか」
②大切なのは、値下げという表面的な対
応ではなく、以下の構造的な対応である。
「原価構造と顧客体験を根本から設計し直す」
③例えば、ECサイト運営であれば、
以下のような置き換えが可能である。
「仕入れルートの見直しや定期購入
モデルの導入が、川上を握ること」
↓
産地直送・メーカー直取引によって、 中間マージン
を排除し、価格でも利益の出る体質を先に設計する。
④検索・SNS・メルマガを組み合わせた、複数
の流通チャネルを持つことが、Luckinコーヒー
のデリバリーネットワーク拡充に当たる。
どの入り口からでも購入導線に繋げる設計が、
ブランドの接触頻度と顧客単価を引き上げる。
↓
業種や規模が違っても 「安く売れる体質を先に作る」
という思想は、どんなビジネスにも応用できる普遍
的な戦略である。
⑤ECサイト構築においても、この発想は直結する。
価格で差別化するのではなく、顧客が「繰り返し」
買いたくなる仕組み(定期購読、会員プログラム、
パーソナライズされたレコメンド)を「プラット
フォームの設計段階から」組み込んでおくことが、
長期的な競争力の源泉になる。
9. まとめ (不景気は仕組みを作った企業の追い風になる)
①中国デフレの最前線が教えてくれることはシンプル。
消費者は賢くなり、価格と価値を冷静に見比べます。
↓
多角化は、戦略なき拡大では機能せず、
安売りは仕組みなしでは自滅への道になります。
②その逆境の中で輝くのは、低価格を可能に
する「構造を先に設計」し、高頻度の利用で
積み上げる体力を持った企業です。
以下は、 「安い」という言葉の裏に、
緻密なビジネス設計が息づいています。
・蜜雪冰城の 6元のミルクティー
・瑞幸珈琲のスマホ注文コーヒー
③不景気は仕組みを作った企業にとって追い風になります。
この「逆説的な真実」を中国の飲食市場
はリアルタイムで、証明し続けています。
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