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【中国G46】 中国日本商会2025年白書を参考にした「日系企業の視点」2025.10.26

 

 1. 中国ビジネスは「終わった」のか

①2025年白書が示す日系企業の静かなる逆襲

以下のような声を耳にすることが増えていませんか？
「中国ビジネスの環境は厳しくなる一方だ」

 

確かに、以下のような課題が山積みであることは事実。

　・米中関係をはじめとする国際情勢の変化
　・中国国内における経済成長の鈍化
　・高齢化の進展 など

 

 

②しかし、 中国日本商会が発表した「中国経済と
日本企業2025年白書」を詳細に分析すると、これ
らの課題に対応する、中国政府の「変化への意志」
が随所に感じられる。

 

今回は、白書の核心をひも解きながら、日系BtoB企
業が次の成長をどう描いていくかについて お話する。

 

 

 

 2. 2024-2025年（中国政府の確かな歩みとその本気度）

①中国政府は、外資系企業の声に真摯に耳を
傾け、ビジネス環境を整備しようとする前向
きな姿勢を見せ始めている。

 

2025年に発表された「2025年外資安定化行動方案」
は、外資企業の経営環境改善に向けた具体的な工程
表として注目に値する。

 

 

②商務部による外資企業との進捗説明会も、
継続的に開催され、 政策執行の透明性向上
に努める姿勢が窺える。

 

特に注目すべきは 2024年11月30日から2025年12月31日
までの期間、日本の対する訪中短期ビザ免除措置が復活
し、滞在可能期間が15日から30日に延長されたこと。
　　　　↓
これは、人的交流の活性化に向けた中国側の
強いメッセージであり、ビジネスの実務面で
も大きな追風となる。

 

ただしこの措置が「試行」であり、2025年末で終了
する可能性がある点は、 引き続き注視が必要である。

 

（参照:中国が日本に対する訪中短期ビザの免除を発表）

 

 

 

 3. 数字が物語る、日系企業の中国への「静かなる信頼」

①日系企業は実際に中国市場をどう見ているのか。

白書が示すデータは非常に
興味深い事実を伝えている。

 

 

②財務省の国際収支統計によると、日本の対中
投資額は 2024年速報値で 4,931億円と、前年比
1.0%増となった。

中国全体の対内直接投資が国際収支統計ベース
で大幅に減少する中、日系企業の中国への投資
は「驚くべき堅調さ」を保っている。

 

 

③中国日本商会が 実施した 「会員企業景気・事業
環境認識アンケート結果第6回」では、回答企業の
53%が中国市場を、「一番重要な市場」 または
「三つの重要な市場の一つ」と回答。

 

64%の企業が中国の事業環境
に「満足」以上と 答えている。
　↓
これは１年前の調査から、
10ポイントも上昇した数字。

 

 

④これらのデータは、 一部で、喧伝されるような
「日系企業の中国離れ」という 単純な図式ではな
く、多くの企業が中国市場の重要性を認め、 リス
クと向き合いながらも、 ビジネスを継続・拡大す
る「静かなる決意」があることを示唆している。

 

 

 

 4. 現場のビジネスパーソンが実感するホットトピック

白書には 557もの建議が 記載されているが、
中でも、BtoB企業の、日々の業務に直結し、
進展が感じられる分野に焦点を当ててみた。

 

【トピック❶】データ跨境ルール
（明らかになりつつある道しるべ）

「データ三法」は、当初、その規制の範囲
　や執行が不透明で多くの企業を悩ませた。
　　　　 ↓
しかし、 2024年3月に施行された「越境データ
フローの促進・規範化規定」により、機微でな
い個人情報の国外移転手続きが緩和された。

（参照：中国国家互联网信息办公室
「データ出境安全評価申報指南（第二版）」）

 

 

【トピック❷】M&Aの資金調達が柔軟に
　（投資性公司への規制緩和）

中国国内でM&Aを行う際、従来は親会社からの
資金注入に頼らざるを得ない場面が多々あった。
　　　　↓
しかし、2025年1月、商務部は「関於外商投资性公
司再投資有關事項的通知」  を改定し、 投資性公司
が国内で借入金を調達して投資を行えるよう規制を
緩和すると発表した。

 

これは、グループ内の資金をより効率的に活
用できることを意味し、M&A戦略の自由度が
一気に高まる可能性を秘めている。

 

 

（例❶）日系の化学メーカーが中国現地法人を通
じて同業他社を買収する際、従来は日本本社から
の資金送金に頼っていたが、現地での資金調達が
可能になったことで、 スピーディーな意思決定が
実現できるようになる。

 

 

【トピック❸】ICT市場参入の扉が少し開く
　（付加価値電信業務の外資規制緩和）

データセンターや クラウドサービスなどの
分野では、2024年10月、海南自由貿易港な
ど一部地域で外資規制の試行が始った。
　↓
これまで高い壁があった分野での開放は、
中国が技術革新において外資のノウハウ
を必要としている証左かもしれない。

 

 

（例❷）ある 日系クラウドベンダーは海南自由
貿易港での試験的参入をきっかけに、 中国国内
企業向けに ローカルカスタマイズされたクラウ
ドソリューションの提供を開始している。

この動きが全国に広がり、外資系企業が持つ先端
技術やサービス設計の知見が、中国市場で存分に
発揮される日が来ることを期待したいものである。

 

 

【トピック❹】化粧品業界
　（猶予期間設定という現実的な対応）

化粧品の安全評価報告書（完全版）の提出義務化は、
当初、 2024年5月からとされ、業界に緊張が走った。

しかし、国家薬監局は 開始時期
を１年延期することを決定した。
　↓
企業側に十分な準備期間を与える この判断
は、産業界の声に 耳を傾ける「賢明な姿勢」
として高く評価できる。

 

 

資生堂（中国）投資有限公司の責任者は以下に語っている。
「この猶予期間により、 自社の製品安全評価
 プロセスを見直し、より強固な品質管理体制
 を構築することができた」

（参照：国家薬品監督管理局「化妝品安全評価技術指導原則」）

 

 

【トピック❺】模倣品対策
　（小売現場で感じる空気の変化）

白書でも指摘されているように、小売現場におけ
る模倣品販売は依然として課題だが、取り締まり
の強化により「以前よりはマシになった」と感じ
る事業者が増えている。

 

2024年、中国全国の市場監督管理部门は模倣品取締
り件数で前年比15%増加し、 執行力の強化が窺える。
　↓
これは、中国が「知財立国」を目指す上で、
市場の秩序是正が本格化している表れと言える。

 

ある日系家電メーカーの知財担当者
は、 以下のように実感を語っている。
「オンラインプラットフォームでの 模倣品
 通報に対する対応速度が明らかに向上した」

 

 

 

 5. 光と影（未来に向けて引き続き要望する約束）

①良い変化がある一方で、白書が指摘する
課題も、私たちの日常に深く根ざしている。

 

②未来に向けたより強固なパートナーシップ
を築くために、 中国政府に引き続き要望した
いことが３つある。

 

 

【要望❶】「公平な競争」という名の土台を強固に

法の上では、「内資外資平等」と謳われていても、現場
では政府調達における事実上の国産優遇 (「安可」「信創」
制度など) や、 国有企業との取引における透明性の低さ
を感じる場面が少なくない。
　↓
「誰がやっても同じ条件で競える」 という、
　ビジネスにおける最も基本的なルールが、
　より一層浸透することを願ってやまない。

 

 

【要望❷】ガラス張り行政で予見可能性を

法規制の変更が、突然発表され、
十分な準備期間が与えられない。

検査や行政指導の際にその根拠が明確に示されない。
　↓
こうした「不意打ち」は企業経営に
おける、最大のリスクの一つである。

 

規制の「意図」と「手順」を事前に可視化し、
企業が安心して投資判断ができる環境こそが、
長期的な信頼を生み出す土台になる。

 

 

【要望❸】「人の行き来」を当たり前に

ビザ免除措置の試行は 大歓迎だが、これを
「常態化」させることで、 ようやくビジネ
スの血流は完全に回復する。
　↓
「いつでも気軽に訪問できる」という安心感は、
商談や現地調査、技術支援など、あらゆるビジ
ネス活動の活性剤である。

 

日中双方の経済にとって、人的交流は「必須
のインフラ」であるという認識が必要である。

 

 

 

 6. まとめ（複雑さを愛おしみ、変化を糧にせよ）

①中国日本商会の白書に記載された、557の
建議は 単なる要求のリストでは ありません。

これは、 中国市場と共に歩み続けたいと
願う日系企業の「ラブレター」 なのです。

 

 

②このメッセージを 受け止め、 対話を重ねる
中で、日中両国のWinWinの関係がさらに深ま
っていくことが期待されます。

しかし、それを単なる願いで終わらせてはなりません。

 

 

③今こそ、自社の中国事業を見つめ直し、
この変化の時代に対応するためのホーム
ページ刷新を考える時です。

 

中国市場の複雑さを単なるリスクと見るのではな
く「変化を糧に成長する機会」と捉え、そのメッ
セージを世界に発信するプラットフォームとして、
ホームページの役割が再定義されるべきです。

 

 

④貴社は、この変化にどう対応し、
どう成長の物語を紡いでいきますか。

白書が示すデータと趨勢は、次の一手を考
える上で、 確かな羅針盤となってくれます。

 

 

参照：
中国日本商会「中国経済と日本企業2025年白書」
財務省「国際収支統計」
中国商務部「2025年外資安定化行動方案」
国家互联网信息办公室「越境データフローの促進・規範化規定」
国家薬品監督管理局「化妝品安全評価技術指導原則」

 

 

（参考）中国市場で「AI検索敗戦」を喫する日系企業の根本問題

 

 

 

 

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