上海物来喜電子商務有限公司

【中国G49】「十五五計画」の二大潮流と中国未来市場の錬金術2025.10.30

 

 1. 中国経済が迎える巨大な転換期

①中国経済は現在、「量的拡張」から、
「質的深化」への大胆なシフトを推進している。

この転換を導く羅針盤が、
「第十五次五カ年計画」（十五五計画）。

 

 

②十五五計画では「内需喚起」と「科学技術
イノベーション」が二大主軸として浮上する
と予測される。

これらは孤立した政策 ではなく、互いに支え合
い、 相乗効果を生み出す「双璧の戦略」である。

 

 

③今回はこの二大主軸がBtoB市場にもたらす
具体的なビジネスチャンスについて お話する。

 

 

十五五計画とは、 中国が、 2035年の社会主義的現代化の基本的実現に向け
た鍵となる５カ年計画であり、次の100年の奮闘目標の第一段階を担うもの。

現在、この計画の策定作業は、 順調に進行しており、2026年3月の
全国人民代表大会での承認を経て、正式に施行される見込みである。

 

 

 

 2. 科学技術イノベーション
　（TFP向上こそが成長の最後の砦）

①成長モデルの緊急転換
（なぜイノベーションが最優先されるのか）

 

中国経済はかつて、資本投入に
大きく依存し、急成長を遂げた。
　　　　↓
しかし、以下の二重の壁に直面している。

　・資本効率の低下
　・無視できない労働人口の減少

 

 

②国家統計局のデータによると、2023年の中国
の 総和特殊出生率は、1.09と過去最低を記録し、
労働力人口の減少が構造的な課題となっている。

 

また、 中国国家統計局のデータによれば、生産年
齢人口　(15～64歳) は、ピーク時の2013年頃から
減少傾向にあり、 これに伴い、 賃金上昇圧力も高
まっている。

 

このままでは、従来の「生産要素依存型」
成長モデルは限界を迎えることは 明らか。
　　　　↓
そこで「十五五計画」が打ち出すのは、
全要素生産性 (TFP) の向上という名の、
持続的成長を支える 唯一の道筋である。

 

 

TFPとは、技術進歩、制度改革、資源配分の最適化を通
じて、経済効率そのものを根底から改善する試みを指す。

 

 

③日系BtoB企業が理解すべきは、この変革が短期的
な景気対応策ではなく、2035年の「先進国中位水準」
達成に向けた国家の長期戦略であるという点。

 

 

 

 3. R&D投資の「覚醒」（量から質へ、基礎から応用へ）

【覚醒❶】科学技術推進の具体的な現れとして、
研究開発（R&D）投資は、 今後大幅に拡大する。

 

⑴ 中国科学技術部の発表によると、R&Dの対GDP比
は、 現在の 2.7%（2024年）から 「十五五計画」期
には 3%前後にまで上昇し、米独日などのOECD主要
国の水準に近づく見込みである。

 

 

⑵ 特に、注目すべきは、単なる投資総額の
拡大に留まらない 「構造的な転換」である。

 

基礎研究の強化がその典型例で、基礎研究比率
は 2024年の 6.9%から、 将来的には 8〜10%へ
の拡大が見込まれている。
　　　　↓
これは、目先の利益だけでなく、未来の技術の源泉
を「自力で生み出す体制」を築く意図を示している。

 

 

⑶ R&D投資の約75%を企業が担うが、政府は税制
優遇や成果転化制度の整備を通じて、 企業の研究
意欲を後押しする。

 

例えば、2023年に導入された「スーパーデダクション」
政策では、 科技型中小企業の 研究開発費用の 100%を
税額控除の対象としている。

 

 

中国のスーパーデダクション（増値税の超控除）とは、特定
の先進製造業などの企業を対象に納付済み増値税の控除率を
の通常より引き上げる税制優遇政策のこと。企業の税負担を
軽減し技術研究開発と設備投資を促進することを目的とする。

 

 

【覚醒❷】BtoBチャンスの黄金郷：新質生産力と重点分野

科学技術イノベーションの基盤の上に築
かれるのが「新質生産力の発展」である。
　　　　↓
政府は、投資を不動産や、鉄道といった伝統
分野から、戦略的「新興産業」や「未来産業」
へと大胆に誘導する。

 

 

【覚醒❸】日系企業がフォーカスすべき「黄金の鍵」となる分野

（分野❶）算力（コンピューティングパワー）と AI

中国工信部の計画によると、2025年までに全国
のコンピューティングパワーは2023年比で50%
以上増加する見込み。
　　　↓
大規模言語モデルやインテリジェント・コンピュ
ーティングセンターの整備が進み、「人工知能＋」
政策を通じて、あらゆる産業のスマート化が急速
に進展する。

 

安徽省では、既に、算力インフラに特化
した「東数西算」プロジェクトが進行中。

 

 

（分野❷）スマート製造（高度化された製造業）

製造業は引き続き経済の基盤だが、技術革新
との融合による、質の高い成長が求められる。

 

例えば、深圳市では「スマート製造発展専項資金」
を設け、デジタルツインや工業インターネットの
導入を支援している。

 

日系企業のファナックは中国工場向けに、
AI搭載のロボット制御システムを 開発し、
現地企業の自動化需要に対応している。

 

 

（分野❸）シルバー経済（高齢化関連）

⑴ 2023年末時点で、中国の65歳以上の人口は
2.1億人に達し、総人口の 14.9%を占めている。

 

⑵ この急激な高齢化に対応するた
めの 新サービス・技術開発が急務。

パナソニックは江蘇省で、高齢者向け見守
りロボットと、スマートホームシステムの
実証実験を開始した。

 

 

（分野❹）水素エネルギー

中国国家能源局は、2025年までに燃料
電池自動車５万台、 水素ステーション
1000ヶ所の目標を掲げている。
　↓
新エネルギー分野の突破口
として戦略的に支援される。

 

 

（分野❺）低空経済

中国民航局の予測では、2025年までの
ドローン市場規模は年間2000億元に達する。
　↓
ドローンや、eVTOL (電動垂直離着陸機) といった
次世代の交通・物流システムの開発が進んでいる。

 

深圳市では配送ドローンによる医療
物資輸送の実用化が進められている。

 

 

 

 4. 内需喚起（巨大市場の享受型転換と投資の質の向上）

①消費構造の静かなる革命：「モノ」から「コト」へ

世界経済の回復が鈍化する中で、中国は巨大な
国内市場の潜在力を活かすため「内需喚起」を
最優先課題の一つに位置づけた。

 

国家統計局のデータによると、2023年の内需の
GDP成長寄与率は 約75%だったが、その持続性
を高めるための「多次元政策パッケージ」 が展
開される。
　　↓
注目すべきは、消費の質的な転換。

 

中国の一人当たりGDPが、1万2,000ドルを超えた今、
消費は生活必需品を中心とした「生存型」から、豊
かさを追求する「享受型」へと静かに移行している。

 

 

②2024年時点で、サービス消費の支出比率は
46.1%に留まっており、 日本 (約60%) などの
先進国と比較してまだ低い水準にある。

この「大きなギャップ」こそが、
今後の成長の主軸となる潜在力である。

 

 

③政府は、耐久消費財の伸びが鈍化する中、観光、
教育、医療、文化などの「サービス産業」を重点
的に支援し、消費の多様化と内需拡大を図る。

 

 

④サービス産業の 高度化と、効率化は、
BtoBソリューションの「出番」である。

 

例えば「コト消費」を支えるインフラ
や、技術提供に大きな需要が生まれる。

・医療・ヘルスケア分野における精密機器やITソリューション
・観光や文化施設におけるデジタル体験技術
・教育機関向けの高度なシステム など

 

オムロンは上海市で遠隔医療向けの生体情報
モニタリングシステムの提供を開始している。

 

 

 

 5. 財政の民生シフト（所得分配改善が消費の土台に）

①内需を長期的に支えるため、十五五計画
では「財政支出構造の最適化」が図られる。

財政部のデータによると、2024年の社会保障・
就业支出は、前年比 6.5%増の 3.9兆元に達した。

 

政府は、 インフラ分野への支出を減らしつつ、
教育、社会保障、医療などの 民生分野への支
出を拡大する方針を強めている。
　　　　↓
これは、社会保障の充実を通じて家計の負担を
軽減し、住民の消費意欲を長期的に高めようと
する戦略である。

 

所得分配制度や、社会保障制度の整備は、
「改革の全面的深化」 の一環であり消費拡大の
ための安定した土台を築くことを 目指している。

 

 

②投資の「人への転換」と都市更新の魅力

消費だけで膨大な経済増分 (５年間で推定 34.5兆元増)
を賄うのは困難なため、有効投資の拡大は、引き続き
成長の柱である。

 

しかし、投資の方向性が劇的に変わる。
　　　　↓
従来の不動産主導型成長は限界を迎えたため、
投資の質は「人への投資」 へと転換すること
が重視される。

 

 

③日系BtoB企業にとって見逃せないのが都市更新。

都市化の方針が、 「量的拡張」
から「質的向上」へ転換される。

 

過去の「棚戸区改造」のような大規模な取り壊
しではなく、老朽団地や都市インフラの改修・
改良・再生を中心とする。
　　↓
住宅都市農村建設部の 計画では 2025年までに全
国 21万ヶ所の 老朽小区の改修を 目標としている。

 

これにより、居住環境を改善しつつ建設・住宅設備
・スマート機器などの「関連産業の活性化」を狙う。

 

例えば、上海市では「スマート社區」プロジェク
トを推進し、高齢者対応のスマートホーム設備や、
エネルギー管理システムの導入を進めている。

 

 

④都市更新は、短期的な景気刺激策というより、
長期的に投資と消費の好循環を生み出す仕組み。

 

老朽化したインフラ改修に 必要な高度な資材、
環境性能を高めるための技術 （グリーン・低
炭素分野）、スマートシティ化を支えるデジタ
ルソリューションは「安定した需要源」となる。

 

LIXILは北京市で、節水型衛生設備を用い
た 団地改修プロジェクトを手がけている。

 

 

 

 6. まとめ（双璧戦略の相乗効果）

①内需と科学技術という二大主軸は、まるで車
の両輪のように相互に支え合いながら進みます。

 

科学技術は「内需の燃料」となり、イノベーション
は内需拡大に対し、新しい製品、サービス、ビジネ
スモデルという名の「燃料」を提供します。

 

例えば、以下。
・AIを活用した新しい教育サービス
・スマート機器と融合したシルバー経済向けサービス

 

 

②一方、内需は科学技術の市場となり、巨大な
国内市場は、科学技術の成果を試す広範な応用
シナリオと成長のための広大な市場を提供する。

 

 

③この相乗効果を可能にするのが、中国共産党
第20期中央委員会 第3回全体会議で 打ち出され
た「改革の全面的深化」です。

 

以下、全ての「制度的保障」が二大主軸を貫く背骨となります。

　・全国統一大市場の建設
　・科学技術体制改革の深化
　・生産要素の市場化（技術・土地・
　　データの市場化配置・試点）の促進

 

 

④日系企業にとって、十五五計画は単なる
政策文書ではなく、未来市場への地図です。

 

科学技術イノベーション と、 内需喚起 と いう
「二大潮流を」読み解き、自社の強みを活かし
たビジネス戦略を構築することが、今後５年間
の中国市場での成功への鍵となります。

 

 

 

参照URL：
・中国国家統計局
・中国科学技術部
・中国工業情報化部
・中国住宅都市農村建設部
・中国国家能源局
・中国民航局

 

 

 

（参考）上海市は「第14次五カ年計画」に基づき「3+6」の新型産業体系の構築を推進している。

 

 

 

 

本ホームページの収録内容はすべて当社に著作権があります。
無断転載・複製は、固くお断りいたします。
以下の場合には、お気軽にお問い合わせください。
サービス内容 / 機能の実現性 / お⾒積もり