上海物来喜電子商務有限公司

【中国G55】 ユーザーを惹きつけるホームページの「スクロール美学」2025.11.01

 

 1. Web担当者の共通課題とその根本原因

①多くの日系企業のWeb担当者は、
　以下のような悩みを抱えている。

「ホームページへのアクセス数はまずまず
　なのに、なぜか問い合わせに繋がらない…」

「自社の製品情報やサービス内容を詳細に
　掲載しているのにサイトの離脱率が高い…」

 

 

②一見不可解に思えるこれらの
現象には実は明確な理由がある。

 

その核心は、現代ユーザーの
「情報取得行動」の根本的な変化にある。
　　↓
ユーザーはもはや、従来のような「回遊」
をせず、必要な情報を素早く取得し目的
を達成すれば、速やかに「去っていく」。

 

 

③この変化に対応するためには以下が不可欠になった。

「ホームページ設計のパラダイムシフト」

 

 

 

 2. ユーザー行動のパラダイムシフト
　（「回遊」から「垂直探索」へ）

【パラダイスシフト❶】過去のホームページ設計哲学

旧来のホームページ設計では ユーザーをホーム
ページ内で「回遊」させることを 重視していた。

 

あちらのページ、こちらのページへとリンクを
辿らせ、「多くのページを 閲覧させる」 ことで、
エンゲージメントを高めようという発想だった。
　↓
これは、 インターネットの回線速度が遅く、
ページ遷移に 時間がかかった時代の名残で
もある。

 

 

【パラダイスシフト❷】 現代ユーザーの行動特性

しかし、現代のユーザーは明らかに異なる。

 

彼らは必要な情報を素早く取得するために、
ホームページを訪問し、 目的を達成すれば
速やかに「去っていく」。
　↓
つまり、現代のユーザーは「回遊しない」。

 

 

【パラダイスシフト❸】スクロール型ページ設計

この課題に対処するためには、
「１つの大きなテーマに１ページ」の原則を
貫き、ユーザーがスクロールだけで必要な情
報を得られる設計にすることが効果的。
　↓
スクロール型ページは現代のユーザー行動に
「完全に適合した設計思想」であると言える。

 

 

 

 3. ケーススタディ（スクロール型ページ設計の成功例）

（例❶）精密機械メーカー「タカヤマテック」の成功事例

タカヤマテックは、中国市場に精密測
定機器を提供する日系メーカーである。

同社は以前「製品紹介→技術仕様→導入事例
→お問い合わせ」という流れを４つの別々の
ページに分けて構成していた。

 

しかし、この設計では、ユーザーが情報を
探す過程で離脱するケースが多発していた。
　↓
2023年、同社はこれらの情報を「１ページ」
の ランディングページに、 統合する大胆な
リニューアルを実施した。

結果、問い合わせ率が大幅向上する成果を上げた。

 

 

①成功の秘訣となった３つの設計要素は、以下。

【設計要素❶】アンカーメニューの活用：

ページ上部に 固定表示の「アンカーメニュー」を
設置し、 ユーザーがスクロールしながらも、必要
なセクションに即座に移動できる機能を残した。

 

【設計要素❷】視覚的な区切りの導入：

各セクション間に十分な「余白」と視覚的な
「区切り」を設け、スクロールによる疲労感
を軽減することに成功した。

 

【設計要素❸】アコーディオンUIの採用：

詳細な技術仕様には、展開式の「アコーディオンUI」
を採用し、 情報の過剰表示を防ぎつつ、必要なユー
ザーには詳細情報を提供できる設計とした。

 

 

（例❷）産業用ソフト「デジタルブリッジ」のアプローチ

⑴ デジタルブリッジ社はBtoBソリューショ
ンの複雑さを 「いかに１ページで伝えるか」
という課題に直面していた。

同社の提供する工場管理システムは、機能が
多岐にわたるため、従来は複数ページにわた
る説明が必要だと考えられていた。

 

⑵ 革新的な設計アプローチは、業種別タブ分類。

自動車、電子部品、食品など業種別の課題と解決
策を「タブ形式で整理」し、ユーザーが必要な情
報だけを取捨選択できる仕組みを導入した。

 

 

 

 4. スクロール型ページ設計の５つの黄金律

【黄金律❶】情報の階層化と視覚的ガイド

　スクロール型ページでは、
「情報の優先順位」がより重要になる。

 

ZパターンやFパターンなどの視線の動きを
考慮し、重要な情報を自然なスクロールの
流れの中に配置することが不可欠。
　　↓
ユーザビリティ研究の第一人者であるニー
ルセン・ノーマングループの調査によれば、
ユーザーは Webページを F字型のパターン
で読み進める傾向がある。
（参照：Web上のF字型読書パターン） 

 

 

【黄金律❷】スクロールの「ご褒美」を仕掛ける

ユーザーがスクロールを続けたくなるよ
うな「ご褒美」を途中に配置することは、
エンゲージメント向上の鍵となる。
　↓
これには、以下が含まれる。

　・美しいビジュアル
　・興味深いデータ
　・短い動画 など

 

 

【黄金律❸】モバイルファーストの思考

中国ではビジネスユーザーでも、モバ
イル端末からのアクセスが増えている。
　　　↓
タップターゲットの「大きさ」やスクロールの
「快適さ」を設計段階から考慮することが必須。

 

 

【黄金律❹】進捗インジケーターの活用

長いページでは、現在地と全体の長さが分
かる「進捗インジケーター」があるだけで、
ユーザーの不安を軽減できる。
　　　↓
ヒューマンコンピュータインタラクション
の研究によれば、ユーザーは自分の位置や
進捗が把握できない状況に、強いストレス
を感じることが明らかになっている。

 

 

【黄金律❺】適切な「息継ぎ」ポイント

文字や画像がびっしりと詰まったペ
ージはスクロール疲れを引き起こす。

 

適度に「余白」を設け、視覚的な「休憩ポイント」
を設けることで最後まで読んでもらいやすくなる。
　↓
デザイン心理学の研究では、適切な余白が
あるデザインは、「情報の理解度」を 20%
以上向上させることが確認されている。

 

 

 

 5. BtoB企業こそスクロール型ページが有効な理由

①BtoBの購買決定プロセスは複雑で多くの情報
が 必要である一方、意思決定者には時間がない。

 

スクロール型のページ設計はこの相反する
ニーズを解決する「理想的な方法」である。

⑴ 一貫性のあるストーリー展開：
複雑な情報を断片化せず「一貫性」の
あるストーリーで 伝えることができる。

 

⑵ 比較検討の容易さ：
関連情報を行き来する必要がなく、
「比較検討」がしやすくなる。

 

⑶ 説得材料の自然な提示：
導入事例や、データなどの「説得材料」
を情報の流れの中で自然に提示できる。

 

⑷ 迷子にならない導線：
最終的な「CTA（問い合わせなど）」まで、
ユーザーが迷子になることなく誘導できる。

 

 

②フォレスターリサーチの調査によれば、
BtoB購買決定者の72%が購買プロセス初期段
階で 「包括的な情報を提供するベンダー」を
高く評価していることが 明らかになっている。

 

 

 

 6. スクロール型ページ設計の落とし穴と回避策

【落とし穴❶】読み込み速度の低下
①多くの要素を１ページに詰め込むため、
 「読み込みが遅くなる」リスクがある。

②回避策：
・WebP形式など最新の画像フォーマットを採用する
・遅延読み込み（Lazy Loading）を実装する
・クリティカルCSSをインライン化する

 

 

【落とし穴❷】SEO上の課題
①１ページに多くのキーワードを詰め込むと、
 「SEO上の焦点がぼやける」可能性がある。

②回避策：
・主要キーワードを明確に定義し、
　適切な見出し構造で強化する

・セマンティックHTMLを活用し、 検索エンジン
　が、コンテンツを正しく理解できるようにする

・内部リンク構造を最適化しサイト
　全体のSEO価値を適切に分配する

 

 

セマンティックHTMLとは、HTMLを使用して マークアップする際に、
HTMLの構造が適切な意味を持つようにコーディングすることを指す。

丁寧なコーディングは手間がかかる作業だが、これにより コードの読み
やすさや、 検索エンジンの最適化（SEO）において、大きな利点がある。

 

 

【落とし穴❸】情報の過負荷
①全てを１ページに詰め込もうとすると、
ユーザーが「圧倒されてしまう」可能性がある。

②回避策：
・コンテンツの優先順位を明確にし、
　必須情報と、 詳細情報を区別する
（特に結論から書くと、離脱しにくくなる）

・詳細な技術資料や、仕様書は別ページとして、
　準備し必要に応じてアクセスできるようにする

 

 

 

 7. 未来を見据えたホームページ設計

①ユーザーの行動はさらに変化し続けている。

AIアシスタントの普及などにより 情報取得方法は
多様化しているが、以下の基本原則は不変である。

「必要な情報を素早く、ストレスなく提供する」
　↓
Gartnerの予測によれば、2025年までにBtoB購買
プロセスの80%が「デジタルチャネル」を通じて、
行われるようになり、その中でも AIを活用した情
報収集が一般的になるとされている。

 

 

②スクロール型ページ設計は、
現代の「ユーザー行動に合致」した効果的
な手法だが、それは、あくまで手段である。

 

本当に重要なのは、以下を深く理解し、
ニーズに合わせた体験を提供すること。

「自社の顧客が何を求め、
　どのように情報を消費するか」

 

 

 

 8. まとめ（スクロールの先にあるもの）

①現代のBtoBホームページ設計において、
「クリックさせるな、スクロールさせろ」
は新しいネットツールとなりつつあります。

 

ユーザーはすでに、長いページをスクロール
して読むことに「慣れており」、 むしろ それ
を期待しています。
　↓
これはスマホの普及によって、以下が影響しています。

・スクロール操作が日常的になったこと
・ソーシャルメディアでのコンテンツ消費習慣

 

 

②ホームページリニューアルを検討されてい
るなら、まずは自社ホームページのユーザー
ジャーニー（操作旅程）を見直してみること。

・ユーザーが目的の情報にたどり着
　くまでに何回クリックが必要か？

・必要な情報は１ページにまとまっているか？

・モバイル端末での操作性は最適化されているか？

 

 

③スクロール型ページへの移行は、
「ユーザー中心設計への回帰」です。

スクロール美学を理解し、実践することで、
訪問者を単なる閲覧者から、 熱心な見込み
客へと変えることができます。

 

 

（参考）縦長のレイアウトで「スクロール」することで順を追って情報を得られる

 

 

 

 

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